何か方策はないものか?

 今日は久しぶりにメンフィスからMが来た。かつてはアトランタに住んでいたのだが、職を解雇され、メンフィスで仕事を見つけた。それでも「メンフィスは田舎で美味しい刺身がない」ということでアトランタにたまに来る。彼のことは以前に書いたと思う、ボンドトレーダーで、最低預かり金額は$1M、したがって私はお客さんにはなれない。
 それでも金融情報を根掘り葉掘り聞くのが私の趣味だろう。以前はシティ銀行を買うかどうかで議論したこともある。結果的に買わなかったのが正解だった。
 そのMが、「今日はお客さんの払いなので多めに請求してもいいよ」と言ってくれたので、2人前の刺身を少し値段を上げて100㌦請求した。相手がしろというので、したわけだが、暇な日に100㌦お売り上げは大きい。
 そして彼が「そういうえば、アトランタ時代によく寿司バーに1人で来ていた酒を飲む紳士はどうした?」と聴くので、「あー、Mr.Kのことだろう。LAに行ったさ。上客はどんどん消えているさ」と答えた。

 そういえば、1人で150ドル以上使うお客さんが消えてしまった。Mr.Kは実にいいお客さんだった。日本酒を飲み、お任せで何でも食べてくれた。NHLのスター、イリヤは家族3人で250-300ドルも使ってくれた。こういう上客が週に1回は来ていたわけで、そういう売り上げが諸事情によって消えたことが私の店の売り上げ減の半分になると推測する。新規のお客さんも確かに来ているが、このご時勢で100ドル使う人は本当に少なくなった。じゃあ、値上げして単価を上げるか?そんなことは今、やるべきではない。すぐに敏感に反応されて、拒否反応を示すだろう。

 この前は、刺身の大きさが小さいとクレームを受けたこともある。それだけお客さんは敏感なんだろう。うちではなるべく刺身は多めに盛るようにしている。目新しい魚に挑戦する分、結果的に出ない魚が多い、ただ出ない魚が劣化することを考えると、サービスで盛り込みに入れてしまったほうがマシ。それで感謝されてリピーターになってもらえるのであれば、宣伝費と思えばいい。
 新しいものに挑戦すれば必ず売れないものが出てくる。特に米人は知らないものを頼まないので売れないことが多い、それでも食べさせて気に入れば次は注文する。それを証明したのが昨日だった。数少ないセレブの1人、マイク・ミルズさんの来店。前回はイカの握りを紫蘇で巻き、梅をつけて喜んでもらった。すると昨日は彼の方から注文してきた。人間とはそういうもので、国境も肌の違いもない。私は耳の部分を握った。そこが一番薄くて柔らかく、また食感がいい。こうして提案するものを受け入れてもらえることが満足の1つであろう。ただ、自分の仕事をさせてくれるお客さんが減ったことは確か。それでもお客さんは全米から世界中からやってくる。

 だんだん加齢していくと量を追うビジネスは体力的にきついわけである。そうなると同じ売り上げや利益を計上するには質の高いものを売り単価を上げていくしかない。そういうお金持ちのいる場所でビジネスをしたいという願望もある。そこであれば、日本や世界中から高級食材を仕入れて、1人10万円のコースも出来上がることだろう。
 かつてニューポートビーチのNOBUが毛蟹を北海道から仕入れて、1オーダー500ドル以上請求したという、それでも食べたい人がいるわけで、それはそれでいい。私はそれを米国ではなく、アジアでやりたい。最初からターゲットは華僑と決めている。
 魚釣りをするのに、魚がいるところに行って釣りをすれば、魚を釣り上げることができるんじゃないかと思う。
 ただ、現状は違う。どんどん魚が減っている。特に大物の魚が激減している。だから頭が痛い、何か方策はないものかと日夜考えている。

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