雲行きの怪しさ その2

 実は、昨年11月の週刊ダイヤモンドに少し興味深い記事があったので、紹介しましょう。これを読んで皆さんはどう思うでしょうか?

米国債が最上格トリプルAから転落する日
 米国債は、繁栄する米国の象徴である。比類なき国力を背景に、信用度は図抜けており、流動性はきわめて高い。各国政府がドル建て外貨準備の主要投資先として大量に購入し、その吸引力で米国は経常赤字を埋めることができる。一方で、米国債の金利は長期金利の世界的指標、つまり基準値である。したがって、米国債の格付けが最上のトリプルAであることは、侵されざる当然の地位だった。 だが、その“不倒神話”を疑うものが少しずつ増えている。
 世界的金融危機を引き起こした責めを負い、金融システム救済と実体経済悪化を食い止めるために、米国は膨大な財政支出から逃れられない。その広がりは、まだ際限ない。どれほどの金融機関を救えばいいのか、もはや恐竜のごとき自動車ビッグスリーにどれほどの資金をつぎ込めば助けられるのか。どれだけ、橋や高速道路を作れば――オバマ新大統領は大規模な公共事業の必要性を言明している――、失業率は低下するのか。
 2008会計年度の財政赤字は4380億ドルであり、2009年度は1兆ドルを超えると見られる。金融危機、景気後退から脱出すべく、手を打てば打つほど財政赤字が拡大し、ドルの信認が揺らぎかねないというトレードオフに陥っている。
 現在起きている混乱が、いつどのように収束するのかは分からない。だが、一つだけ分かっているのは、このコラムで何度か述べたように、混乱が収束した後の米国は、金融産業の成長停滞によって、潜在成長率が落ちるだろうことだ。
 他方、格付けとは当該債券発行機関の債務支払い能力、すなわち信用リスクを表している。
 となれば、大量に国債を発行して借金を重ねていく一方で、今後、潜在成長率を低下させざるをえない米国の債務支払い能力を、これまでと同等に高く評価していいのだろうか、という疑問が湧いても不思議はない。実際、「米国経済の実態を直視すれば、米国債がトリプルAから格下げされても不思議ではない」という日本の金融当局、金融機関幹部は、決して少なくない。
 彼らの「米国経済の実態を直視すれば」という注釈には、格付け会社の判断に政治的要素が入り込んでいる、もっと言えば、米国の格付け会社であるスタンダード&プアーズやムーデイーズが自国の政府に弓を引くようなまねができるのか、という疑念が混じっている。
 実際、格付け会社の中立性に対する信頼は、今、大きく揺らいでいる。リスクの高いサブプライム関連の証券化商品に投資適格の高い格付けをしていただけでなく、証券化商品を組成する金融機関に、格付けを高くするためのアドバイスをしていたとされる。11月15日に閉幕したG20金融サミットで、EUは格付け会社に厳格な規制適用を迫った。
今のところ、格付け会社が米国債格下げに動く気配はない。ただし、今年1月上旬には、ムーデイーズが「米国政府が健康保険や社会保障費への財政支出を削減する思い切った政策を取れなかった場合、米国債は10年以内に最優良格を失うかもしれない」とコメントし、スタンダード&プアーズは9月、AIGを米国政府が救済した際、「財政にストレスを生じ、米国債のトリプルA格に圧力を加える可能性がある」と述べた。ともに警告としてはささやかだが、格下げの可能性に言及すること自体、かってはありえなかったことだ。
 では、現実に米国債が一段階引き下げられたとしたら、どんな事態が起きるのだろうか。
悲観的に考えれば、“不倒神話”の崩壊で、株式、債券市場で狼狽売りが始まる。米国債価格の下落と金利上昇が波紋を広げ、住宅ローン、自動車ローンなどの金利が上がり、さらに米国景気は悪化する方向に動くことになる。
 長期金利の世界的指標、基準値である米国債金利が不規則な動きを示し、それが世界中の市場を不安定化させ、連動するように為替市場でドル売りが始まる。
中国や日本を始め大量の保有ドル資金を米国債で運用している各国政府は、含み損を抱えることになる。嫌気した各国政府はドル離れ、米国債離れに動く。米国の資金調達能力が急速に低下する。さらに、経済は冷え込む。――これが、米国にとって最悪のシナリオだ。
 2003年、日本国債の格付けがムーディーズによってボツワナ並みに引き下げられたとき、実は、国債の暴落も金利の急上昇も起こらず、国債消化も難航しなかった。それは、日本が貯蓄過剰であり、当時のゼロ金利にも預金者が怒りもせず資金を引き上げなかったおかげで、金融機関が大量に国債を購入することができたからであった。だが、米国の場合、海外の買い手に大きく依存しているという構造の違いがある。
 だが、違う視点で見れば、各国政府はまったく逆に動くことになる。自国の外貨準備に大穴をあけるわけにはいかない。また、すぐに米国債に代わる投資商品があるわけではない。となれば、ドルを支援せざるをえず、少なくとも当面は米国債離れなどできない。不用意に動けば、自らを傷つけることになる。日本政府の発想は、明らかにそうだろう。
 その綱引きのどちらの力が勝るのか、は分からないが、米国債の格下げは、その綱引きを本格化させる“号砲”となる。それは、世界経済の新しい秩序を探る合図ともなる。
 いつも現実は、先回りして動いている。世界一の外貨準備を抱える中国は、政府系投資ファンドを設立し、さまざまな投資を始めている。それは、米国債一辺倒に傾いた運用の軌道修正に重きが置かれているのではないか。つまり、より高いリターンを狙った戦略ではなく、分散ポートフォリオの発想である。
この世界的金融危機でわれわれが得たのは、リスクフリーの金融商品などこの世にありえないのだという教訓である。その教訓に、米国債が含められても不思議ではない。神話は疑うものが多数になれば、倒れる。それを後になって我々は、歴史の必然と呼ぶ。

 中国は動きたいのですが、身動きが取れない状況にあります。 仮に中国がドル暴落を予測し、米国債を買うのをやめたらどうなります? 今持っているドル資産が紙くずになるのです。国債をはじめ、現金も失います。本音としては「冗談じゃないよ、米国債なんて買いたくて買っているわけじゃないんだ。ただ他に投資先あるかい? 仕方なく買っているんだよ。それにここでドルを支えないと、暴落したら世界中がパニックになるしな。我が国も多大な損害を被るからさあ、嫌なんだけど自国のために買っているようなものさ」ではないかと思います。うわさでは自国で掘り出した金を政府が買い上げて貯め込んでインフレ対応をすでにしているそうです。
 日本は? そんなポリシーはありません。対米従属がポリシーですからね。「死ぬときはいっしょ」ぐらいにしか思っていないのでは? いやあ、アメリカと道連れで死ぬのはご免ですね。
 理想的な形としては、やはりアジアが通貨統合するか、中東が通貨統合するなどして、ユーロのようにある程度、米ドルに対抗できる力を持つことでしょう。そうなった時点であれば、米ドルが暴落してもそんなに混乱は起きないと思うのです。その猶予期限をドルが恐らく暴落するであろう5年と見ています。個人的にもドル資産を動かさないといけないので大変なんですよ。

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