医療保険法の勝利

今日は、このニュース一色です。政府が決め議会を通して成立した医療保険改革法ですが、26州あまりが違憲だとして提訴、その中の1州の訴えが認められたために、連邦政府が最高裁に上訴したものです。

 その審議が今日行われ、結果は違憲ではないという5対4で幕切れたわけですね。これによって、国民は医療保険に加入する義務を背負い、加入しない人は罰金を課せられることになります。2014年までに民間の保険に入りますが、貧困層には政府から補助金が出るそうです。

 現在4700万人が健康保険に未加入で、今回の措置により国民の90%が医療保険でカバーされるということで、我々日本人には当たり前のことなんですが、この国は「自由」という建前がありますから、入るのも自由、入らないもの自由だったわけですね。

 結果として、お金のない人が保険に入らない、そして病気になって死んでいく、高額な医療費を背負わされるということで今回の国民保険制度が持ち込まれたわけです。

 ただ、貧しい人を補助金で、強制的に加入させるというのは、お金持ちにとると「税金の無駄使い」になるわけです。このあたりがまた実にアメリカですかね。

 「貧しいのは努力しないから」という風潮があるのが、自由主義資本主義のアメリカです。実際に元奴隷だった黒人層の中の一部には、政府や地方自治体のサポートを充てにしている人が多く、最近はそこにミドル層から脱落した白人層が入り込んできています。

「何も努力しないで、それで保険に入れて国が面倒を見るのはおかしい」ということになるわけですね。

 さらには、「健康なのに保険料を払うのは貧しい人にとってはお金の無駄」という考え方もあるわけです。私も米国に来て最初の10年は無保険でした。別に健康で病気もしないのに、お金を払うのは無駄使いでしたね。
 こういう気持ちは駐在で来ている人にはわからないでしょう。日本の会社に勤めていればとりあえず、日本と同じ条件になっているはずですからね。
ところが私にように移民で米国に入った人間の実情は違うわけです。実際に、うちの店の従業員ですが、10人程度いて、保険は会社にはありません。そんな無駄な経費は使いません。入るなら勝手に入って自分で払ってください、これが本音です。
 もちろん、彼らも「健康なので保険なんて無駄金は使わない」で一致した意見でしょう。そんなものです、これが大半の米人にも言えることだと思いますけどね。

 人によっては、「健康なときには入らない。病気になったら入れば良い」などと都合の良いことを言っています。それだけ健康保険が浸透していないわけですね。
 そういう面では、この国は世界一の医師が多いのに、医療制度は後進国並みといっても過言ではないでしょう。
 それが実際のこの国の姿で「世界一の経済力の国の中に富と貧困が同居」しているのです。だから、面白いんですけどね。

 政府があまりこうした個人のことに干渉すると「社会主義だ」とも言われるんですよ。大統領選の対立候補、ロムニー氏は反対派なので、今後の戦いが面白くなると思います。

 私ですか? そりゃ、あった方が良いと思いますよ。当たり前のことですからね、ただこのまとまりの悪い国で必要かどうかは疑問です。資本主義のルールに反していますからね。「金持ちは生き残れ、貧乏人は死ね」に反しているということです。弱肉強食があって、昨日の貧困は未来の金持ちなどという可能性もまだあるのがアメリカですからね。

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