週末往来! 中田久美が久光の監督で初優勝!
女子バレーの中田久美といえば、私でも知っている天才セッターであったことは記憶にあると思います。その彼女が現在は指導者として久光製薬の監督を今季から務めていますが、1年目で優勝しました。その記事からです。
24日に宮崎県の都城市体育文化センターで行われた天皇杯・皇后杯全日本選手権の女子決勝で、久光製薬スプリングスは東レアローズを3−1で破り、3大会ぶり3度目の優勝を飾った。
勝利の瞬間、久光製薬の中田久美監督はいすに座ったまま、静かに喜びをかみしめていた。
「1人1人が仕事を果たしてくれた。素直にうれしいです」
中田監督が“妹”と称する、セッターの古藤千鶴は「結果を出せてホッとした」と安堵(あんど)の涙を流していた。その姿を確認し、抱擁を交わすと、中田監督の目から涙がこぼれた。
「本当に一生懸命やってくれた。もらい泣きしました」
監督に就任した当初から、日本一を目標に掲げてきた。まだリーグ戦の最中とはいえ、バレーボールの三大タイトルの1つとされる、天皇杯皇后杯全日本バレーボール選手権で、チームとして3年ぶりの優勝を果たし、指揮官として初タイトルを獲得した。照れくさそうに「もらい泣き」とごまかしながらも、満面の笑みがその喜びの大きさを物語っていた。
新監督の就任で、チームは劇的に変わった。ミドルブロッカーの平井香菜子はこう言う。
「今までは、練習でも試合でも『こうしたらいい』と答えが与えられることが、どこかで当たり前のことだと思っていました。でも久美さんは違う。ヒントは与えてくれるけれど『答えは自分たちで考えなさい』という監督なので、自分たちでどうすべきか、常に考えなきゃいけない。今まで以上に、1人1人が“自分は何をすべきか”を考えるようになりました」
変化の程を感じていたのは、久光製薬の選手たちだけではない。10月の国体決勝に続いて、天皇杯皇后杯の決勝でも対戦した東レのセッター、中道瞳も“中田効果”を感じとっていた1人だ。
「久光製薬は1人1人の能力が高い。でも時折、集中力を欠いて崩れ出すもろさもありました。それが中田監督になって、びっくりするぐらい少なくなった。監督の求心力で、こんなにも意識が変わるのか、と驚きました」
日本一になるための意識改革に加えて、中田監督が着手したことがもう1つある。
「今季は、石井(優希)、長岡(望悠)を育てること。チームのためだけでなく、それが全日本の強化にもつながるはずです」
ともに3年目のウイングスパイカー。今夏のアジアカップにも選出された次世代の代表候補として期待のかかる選手だ。
成長のためには、まず経験を重ねることを第一とする中田監督は、2人をリーグ戦の開幕からスタメンで起用した。サーブレシーブの安定感に加え、インナーやストレートなど相手からすれば「ここに来る?」と思うような際どいコース打ちを得意とする石井。そして、東九州龍谷高校時代から動き出しの速い攻撃と、サウスポーから繰り出すしなやかなスパイクを武器とする長岡。どちらもそれぞれの長所を生かし、V・プレミアリーグのみならず、天皇杯皇后杯でも試合出場を重ね、監督の期待に応える活躍を見せた。
新戦力の台頭、育成は大事なテーマではある。しかし、光の当たる場所がある反面、陰となって控えに回り、チームを支えるポジションに徹しなければならない選手も出てくる。特に、サイドの層が厚い久光製薬で、その役割を担ったのが石田瑞穂だ。
若手育成のためとはいえ、誰だって試合に出たい。中田監督も「相当ストレスがたまっているはず」と案じていた。それでも自身の役割を果たすことが、チームのためになると、石田はアップゾーンからコートの選手に積極的に声をかけ、常にモチベーションを絶やさず、準備を重ねてきた。
「ベンチスタートということは、どんな理由があれ、自分の力不足でもある。だからこそ、出番がめぐってきたら活躍すればいいし、今のこのチームでどうアピールするかということが、自分の価値を上げることだとプラスに考えられるようになりました」(石田)
天皇杯皇后杯の準決勝。やや精彩を欠く石井に代わって、2セット目から石田が投入される。機動力を生かし、ミドルの選手との絡みを含めたコンビを石井以上に展開する石田が入ったことで、相手はディフェンスシステムの変更を余儀なくされ、後手後手の対応を強いられた。終わってみれば石田の活躍が光る形となり、3−1で久光製薬が勝利。セッターの古藤も「(石田が入ったことで)全体のスピードが上がり、新しく組み直し、立て直すことができた」と功労者を称えた。
成長のためにと、積極的な起用を明言している以上、中田監督は、石井、長岡を単に「調子が悪いから」という理由だけでは交代させない。期待が高いからこそ、自らの役割を再認識させるために、時に辛らつな言葉で表現する。
「天皇杯皇后杯準決勝、決勝に臨むにあたって、石井とミーティングを重ね、彼女に期待すること、心掛けを伝えてきました。それなのに、あの程度かと。石田や新鍋が控えにいる状況を作ってでも、責任を持たせたいと思って使ってきました。でもだからといって、決して特別なわけじゃない。その程度じゃ、いくらでも代わりはいるんだぞと、思い知らせるために交代させました」
翌日の決勝、石井は最後までコートに立ち続けた。そして石田は、長岡に代わって3セット目から投入され、準決勝に続いて勝利の立役者となった。
時に厳しく、各々のすべきことを再認識させる。それこそが、中田監督の言う「全員が戦力」となるバレーであり、それを実践することで、久光製薬が3年ぶりの女王となった。
それぞれの思いがこもった涙の優勝。だがそれも、今はひとつの通過点にすぎない。誰より強く、そのことを理解しているのは、他ならぬ中田監督自身だ。
「目指すのは、富士山の頂上ではなくて、世界の頂点。この優勝をこれからにどう生かすかが、次の課題です」
またひとつ、高い頂(いただき)を目指して。そのために、今は一歩ずつ。ただひたすら、前へ――。
ビジネスに照らし合わせて、学ぶものがありませんかね?
24日に宮崎県の都城市体育文化センターで行われた天皇杯・皇后杯全日本選手権の女子決勝で、久光製薬スプリングスは東レアローズを3−1で破り、3大会ぶり3度目の優勝を飾った。
勝利の瞬間、久光製薬の中田久美監督はいすに座ったまま、静かに喜びをかみしめていた。
「1人1人が仕事を果たしてくれた。素直にうれしいです」
中田監督が“妹”と称する、セッターの古藤千鶴は「結果を出せてホッとした」と安堵(あんど)の涙を流していた。その姿を確認し、抱擁を交わすと、中田監督の目から涙がこぼれた。
「本当に一生懸命やってくれた。もらい泣きしました」
監督に就任した当初から、日本一を目標に掲げてきた。まだリーグ戦の最中とはいえ、バレーボールの三大タイトルの1つとされる、天皇杯皇后杯全日本バレーボール選手権で、チームとして3年ぶりの優勝を果たし、指揮官として初タイトルを獲得した。照れくさそうに「もらい泣き」とごまかしながらも、満面の笑みがその喜びの大きさを物語っていた。
新監督の就任で、チームは劇的に変わった。ミドルブロッカーの平井香菜子はこう言う。
「今までは、練習でも試合でも『こうしたらいい』と答えが与えられることが、どこかで当たり前のことだと思っていました。でも久美さんは違う。ヒントは与えてくれるけれど『答えは自分たちで考えなさい』という監督なので、自分たちでどうすべきか、常に考えなきゃいけない。今まで以上に、1人1人が“自分は何をすべきか”を考えるようになりました」
変化の程を感じていたのは、久光製薬の選手たちだけではない。10月の国体決勝に続いて、天皇杯皇后杯の決勝でも対戦した東レのセッター、中道瞳も“中田効果”を感じとっていた1人だ。
「久光製薬は1人1人の能力が高い。でも時折、集中力を欠いて崩れ出すもろさもありました。それが中田監督になって、びっくりするぐらい少なくなった。監督の求心力で、こんなにも意識が変わるのか、と驚きました」
日本一になるための意識改革に加えて、中田監督が着手したことがもう1つある。
「今季は、石井(優希)、長岡(望悠)を育てること。チームのためだけでなく、それが全日本の強化にもつながるはずです」
ともに3年目のウイングスパイカー。今夏のアジアカップにも選出された次世代の代表候補として期待のかかる選手だ。
成長のためには、まず経験を重ねることを第一とする中田監督は、2人をリーグ戦の開幕からスタメンで起用した。サーブレシーブの安定感に加え、インナーやストレートなど相手からすれば「ここに来る?」と思うような際どいコース打ちを得意とする石井。そして、東九州龍谷高校時代から動き出しの速い攻撃と、サウスポーから繰り出すしなやかなスパイクを武器とする長岡。どちらもそれぞれの長所を生かし、V・プレミアリーグのみならず、天皇杯皇后杯でも試合出場を重ね、監督の期待に応える活躍を見せた。
新戦力の台頭、育成は大事なテーマではある。しかし、光の当たる場所がある反面、陰となって控えに回り、チームを支えるポジションに徹しなければならない選手も出てくる。特に、サイドの層が厚い久光製薬で、その役割を担ったのが石田瑞穂だ。
若手育成のためとはいえ、誰だって試合に出たい。中田監督も「相当ストレスがたまっているはず」と案じていた。それでも自身の役割を果たすことが、チームのためになると、石田はアップゾーンからコートの選手に積極的に声をかけ、常にモチベーションを絶やさず、準備を重ねてきた。
「ベンチスタートということは、どんな理由があれ、自分の力不足でもある。だからこそ、出番がめぐってきたら活躍すればいいし、今のこのチームでどうアピールするかということが、自分の価値を上げることだとプラスに考えられるようになりました」(石田)
天皇杯皇后杯の準決勝。やや精彩を欠く石井に代わって、2セット目から石田が投入される。機動力を生かし、ミドルの選手との絡みを含めたコンビを石井以上に展開する石田が入ったことで、相手はディフェンスシステムの変更を余儀なくされ、後手後手の対応を強いられた。終わってみれば石田の活躍が光る形となり、3−1で久光製薬が勝利。セッターの古藤も「(石田が入ったことで)全体のスピードが上がり、新しく組み直し、立て直すことができた」と功労者を称えた。
成長のためにと、積極的な起用を明言している以上、中田監督は、石井、長岡を単に「調子が悪いから」という理由だけでは交代させない。期待が高いからこそ、自らの役割を再認識させるために、時に辛らつな言葉で表現する。
「天皇杯皇后杯準決勝、決勝に臨むにあたって、石井とミーティングを重ね、彼女に期待すること、心掛けを伝えてきました。それなのに、あの程度かと。石田や新鍋が控えにいる状況を作ってでも、責任を持たせたいと思って使ってきました。でもだからといって、決して特別なわけじゃない。その程度じゃ、いくらでも代わりはいるんだぞと、思い知らせるために交代させました」
翌日の決勝、石井は最後までコートに立ち続けた。そして石田は、長岡に代わって3セット目から投入され、準決勝に続いて勝利の立役者となった。
時に厳しく、各々のすべきことを再認識させる。それこそが、中田監督の言う「全員が戦力」となるバレーであり、それを実践することで、久光製薬が3年ぶりの女王となった。
それぞれの思いがこもった涙の優勝。だがそれも、今はひとつの通過点にすぎない。誰より強く、そのことを理解しているのは、他ならぬ中田監督自身だ。
「目指すのは、富士山の頂上ではなくて、世界の頂点。この優勝をこれからにどう生かすかが、次の課題です」
またひとつ、高い頂(いただき)を目指して。そのために、今は一歩ずつ。ただひたすら、前へ――。
ビジネスに照らし合わせて、学ぶものがありませんかね?
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