スターバックで満足、元エリートの逆アメリカンドリーム?

 今朝のCNNで見た方もいるでしょう。私はその前にある本を読んでいたので知っていましたが、まさかテレビに登場するとは思いませんでした。
 ギルさんはたぶん70才に近いと思いますが、NY郊外のスターバックスの店員です。この人の人生が今年映画になりますが、主演はトム・ハンクスです(彼がギルさんの書いた本の映画の権利を買ったこともあって)。
 ギルさんは、裕福な家に生まれます。父親は文芸誌の批評家で家にはメイドもいました。 成人したときには10万ドルのお小遣いももらいました。ただでもらったお金は長続きしません。彼は、それを遊びに使い3年でゼロにしました。当然、大学での成績は今一でしたが、父親のコネを利用し有名広告代理店に就職、最後は副社長にまでなりました。家はコネチカットですべてが上流階級の生活でした、おまけに愛人まで作ってしまったぐらいです。
 ところが、57歳のとき、会社を解雇されます。ここからが転落の始まりです。愛人にはすでに子供がいましたが、この浮気が発覚し、離婚。当然財産の半分は前妻に取られましたが、4人の子供の養育費などでほとんどお金は残りませんでした。お金のない男に寄り添う女はいませんから、愛人も逃げていきました。 ギルさんはアパートに引越しましたが、家具もなしの状態でした。そこの不運が重なり脳腫瘍で倒れます。当然保険はありませんから治療もできない状態でした。いつも行くスターバックスで沈み込んでいたところを、その店のマネージャーに声をかけられ、仕事を始めたのです。モップを持って床を掃除、お客さんのこぼしたミルクをふき取るなどなど、生まれてはじめての仕事ばかりでした。そこでギルさんは自分の幸せを見つけたのです。幸いにも心配した子供が店を訪ね、家族の絆を修復しました。自給10ドル以下の生活でも「豊かな生活」があることをギルさんは悟ったのでした。当然、本が売れたので印税とかも入り少しはお金が入ったと思いますが、今でもスターバックスで働き、家は歩いて20分程度の場所にある家の屋根裏だそうです。当然電子レンジはないとCNNのリポーターは語っていました。

 大抵のアメリカンドリームは貧困や逆境の中からチャンスをつかみ、這い上がっていくのですが、これは全く逆さまの話です。
 貧しいときに人は、「あーもっとお金が欲しい、あれが買いたい、これも買いたい」と欲を出し願うものです。事実私もそうでした。ところがある程度のお金が手元にあると、そうした欲望は消えて行きます。なぜでしょう? 私なりの意見では、いつでも買えることを悟る、そうするとあまり欲しいと思わない。そしてお金があるということは賢くなるということで物欲から少し遠ざかる。そして大切なことは、例えばベンツに乗るとか、エルメスを身につけるとかではなく、別にあるということに気づくからではないでしょうか?
 ビジネスもそうで、AXISを97年に始めたときには「競争がないし、儲かるビジネスになる」という動機でしたが、12年もやっていると儲かるとか損するとかの問題ではなくなってくるのです。
 営利目的のレストランも同じで、レストランの存在意義をお金儲けにするのではなく、アメリカ人に日本食の文化を伝える、美味しいものを知らない人にそれを知らせる、未知の食べ物を紹介する、健康になってもらうとかが先に来るのです、お金はそうした後から勝手についてきます。
 簡単に「儲かっているから、ここでビジネスを売り抜ける」とかもできますが、そうしたことをして、今あるお客さんの面倒を誰が見るのかとか、様々なことを考えるとすでにローカル社会の一部になっていますから、途中下車はできないのです。そのまま終点まで走るしかありません。これはありがたいことだと思います。そういう面では私はギルさんの気持ちが分からないでもありません。といって、優雅な暮らしをしたことはありません。したいとも思いません。

参考資料:How Starbucks saved my Life ペーパーバックも出ています。興味のある方は書店でお求めください。
Now in paperback, the national bestselling riches-to-rags true story of an advertising executive who had it all, then lost it all-and was finally redeemed by his new job, and his twenty-eight-year-old boss, at Starbucks.In his fifties, Michael Gates Gill had it all: a mansion in the suburbs, a wife and loving children, a six-figure salary, and an Ivy League education. But in a few short years, he lost his job, got divorced, and was diagnosed with a brain tumor. With no money or health insurance, he was forced to get a job at Starbucks. Having gone from power lunches to scrubbing toilets, from being served to serving, Michael was a true fish out of water.But fate brings an unexpected teacher into his life who opens his eyes to what living well really looks like. The two seem to have nothing in common: She is a young African American, the daughter of a drug addict; he is used to being the boss but reports to her now. For the first time in his life he experiences being a member of a minority trying hard to survive in a challenging new job. He learns the value of hard work and humility, as well as what it truly means to respect another person.Behind the scenes at one of America's most intriguing businesses, an inspiring friendship is born, a family begins to heal, and, thanks to his unlikely mentor, Michael Gill at last experiences a sense of self-worth and happiness he has never known before.

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